山口県弁護士会

(4) 本件手術の手技上の義務違反
ア本件執刀医(第1次的には被告,第2次的にはCを主張する。)は,本 件手術に際し,大胸筋を十分剥離した上でバッグを挿入すべき義務があっ た。
しかるに,本件執刀医は,上記義務を怠り,大胸筋を十分剥離せずに バッグを本来挿入すべき位置よりも上の位置に挿入した。
被告及び被告医 院にとって,本件手術は初めての豊胸手術であったため,経験不足により このような失敗が生じてもおかしくない状況にあった。
イ義務違反と結果との間の因果関係
本件執刀医が上記義務を尽くしていれば,バッグを十分に動かすことが でき,癒着と拘縮が進んで上記(1)イのように乳房の形が不自然となるこ とはなかった。
なお,原告はマッサージを熱心に励行していたのであるから,乳房の形 が不自然な形となった原因がマッサージ不足にあるとはいえない。
(5) マッサージの指導に関する義務違反 仮に乳房の形が不自然となった原因がマッサージ不足にある場合,以下の 義務違反が認められる。
ア被告は,マッサージを原告にゆだねるだけでは足りず,医師によるマッ サージをできるだけ早く開始できるよう配慮し,また,なるべく頻回に来 院させて,マッサージの効果を確認した上でマッサージの方法について指 導をすべき義務があった。
しかるに,被告は,11月18日に原告が電話をした際にも,事務員を 介してマッサージの指導をしたのみで,初回のマッサージを漫然と原告に ゆだねた上,早期来院を指示せずに同月25日まで医師によるマッサージ をせず,その後も12月3日と同月27日しか来院させず,また,マッサ ージ不足を指摘することさえしなかったのであるから,マッサージの方法 について十分な指導をしていたとはいえないのであり,上記義務に違反し た。
イ義務違反と結果との間の因果関係
被告が上記義務を尽くしていれば,原告は,できるだけ早期に被告医院 を受診して,医師によるマッサージを受けていたはずであり,また,適切 な方法でマッサージを行っていたはずであるから,マッサージ不足により 乳房の形が不自然となることはなかった。
(6) 被告の責任及び原告の損害
上記(1)ないし(4)の義務違反は債務不履行及び不法行為(Cの不法行為に ついての使用者責任(民法715条1項)を含む。)を構成するから,被告 は,それによって生じた下記の損害を賠償すべき責任を負う。
ア本件手術代金90万0000円
イ一般病院での療養費8150円
ウ再手術費用の一部(バッグ取り出し費用) 31万5000円
エ再手術のために要した宿泊交通費2万3080円
オ休業損害32万0000円
原告は,コンパニオンの仕事により毎月8万円程度の収入を得ていたと ころ,上記(1)ウの症状により,上記仕事を平成16年1月から4月まで の4か月間休まざるを得なかった。
カ慰謝料150万0000円
キ弁護士費用91万8935円
3 被告の主張
(1) 上記2(1)(本件手術によって生じた結果)について
争う。
(2) 上記2(2)(説明義務違反?(本件手術による傷あとの説明))について ア被告は,原告に対し,腋下を切開しても傷がしわと同化するから目立ち にくいという説明をしたのであり,腋下の傷の長さが何cmというような 説明はしてはいないし,前回手術において使用されたバッグを生理食塩水 バッグであると考えたという事実もない。
したがって,腋下切開による傷 あとの説明に関し,被告に義務違反があったとはいえない。
イ義務違反と結果との間の因果関係について
争う。

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