本件手術における腋下切開の長さは5cm程度であった(原告 の主張では5cmないし6cm)であった。
本件手術後も被告医院に通院し ていたが,平成16年1月23日を最後に通院しなくなった。
原告は,本件手術後の乳房の状態に満足せず,同年4月10日,リッツ美 容外科において,本件手術で挿入したバッグを取り出した上で乳腺下にバッ グを挿入する豊胸手術を受けた(以下,この手術を「再手術」という。)。
(本件で問題となる時期は平成15年8月から平成16年7月までであり, 以下の月日のうち,特に年の記載のないものは,8月から12月までは平成 15年の,1月から7月までは平成16年の月日である。)
2 原告の主張
(1) 本件手術によって生じた結果
ア本件手術において左腋下が5cmないし6cmの長さで切開されたた め,原告の左腋には,腋を閉じた状態でさえも視認できるほど大きな傷あ とが残った。
イ本件手術により,原告の乳房は,バッグの位置が異常に高すぎて,上部 ばかりが大きく膨らみ,乳頭部が膨らみの頂点から下方にずれ,皮が伸び たようにしぼんで垂れ下がるといった,明らかに不自然な形となった。
し かも,左側のバッグの位置が右側に比べて高すぎ,一見して左右アンバラ ンスな形状になった。
そのため,原告は,前記のような再手術を受けざるを得なかった。
ウ本件手術においてバッグの挿入位置が異常であったため,原告は,神経 が圧迫されて,胸,肩,腋や腕の付け根等に断続的な痛みを感じた(この 痛みは,再手術まで続いた。)
(2) 説明義務違反?(本件手術による傷あとの説明)
アバッグを取り出す操作をする際は,切開幅を予想できず,また,皮膚の 伸びが悪い場合は傷が広がりやすいのであるから,被告は,原告に対し, その旨を正確に説明すべき義務があった。
しかるに,被告は,前回手術に おいて使用されたバッグがシリコンジェルであったにもかかわらず,これ が生理食塩水バッグであると見立て違いをしたため,原告に対し,3cm ないし3.5cmの切開でできるという誤った説明をし,上記義務を怠っ た。
イ義務違反と結果との間の因果関係
被告が上記義務を尽くしていれば,原告は,本件手術を受けることはな かったのであり,左腋下に上記(1)アのような傷あとが残ることもなかっ た。
(3) 説明義務違反(術式の選択に関する説明)
ア大胸筋下法を採った場合,下方向を十分剥離することができず,バッグ の位置が高くなりうるのであり,しかも,乳腺下法を採った上でオープン カプセロトミーを行う方法もあったのであるから,被告は,原告に対し, その旨を説明すべき義務があった。
しかるに,被告は,大胸筋下法を採っ た場合の手術についての一般的な説明を行ったのみで,上記説明義務を尽 くさなかった。
イ義務違反と結果との間の因果関係
被告が上記義務を尽くしていれば,原告は,本件手術を受けることはな かったのであり,上記(1)イのようになることもなかった。
なお,原告はマッサージを熱心に励行していたのであるから,乳房の形 が不自然となった原因がマッサージ不足にあるとはいえない。

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